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音楽への憧れ


音楽への憧れがあります。とはいえ、私には音楽に携わるような才能がないのであくまで漠然としたものです。すばらしい生演奏を実際に聞くという機会は、海外のオーケストラの演奏を聞きにいったりすることを考えると誰もがその機会を得られるわけではないかもしれませんが、録音された音や旋律は多くの人々のもとに、等しく、届きいつでも楽しむことができる。音楽に憧れるひとつの理由です。

最近、小さなプライベートのクラッシックのピアノコンサートに通っています。私は音楽に明るくありませんが、ドビュッシーやラヴェルなど近代の音楽家の曲や、ジョン・ケージなど現代音楽の作曲家の作品など、一般的なコンサートではちょっと聞けないような(と私は勝手に思っている)曲をピアニストの方が弾いてくださいます。曲のテーマ(タイトル、例えばノクターン)で異なる時代の曲を比べて、あるいは同じ曲のテンポを変えて弾き比べたり、本来なら組で演奏されるような曲を取り出して演奏してくださったり。

季節によっても音と空間の感じ方が変わります。冬の乾いた空気ではビンビンに響いていた音が、初夏の湿っぽい空気では縦に盛り上がるような印象。湿気を含んだぼわっとした

ドビュッシーのサラバンドもとっても良かった・・・。

空気の中にやがて消えて行ってしまう音や旋律を存分に味わおうとすると、「今ここ」に強く触れようとする自分の意識に気が付きます。後になって思い出す美しい時というのは、実に爽やかに軽やかに、普段着のような装いで自分の目の前を移ろい、飛び去っていく瞬間瞬間だと感じるこの頃。そんな「この一瞬の時と場」を露わにする音がうらやましいと思うのが、音楽に憧れるもうひとつの理由です。

私のとても好きな音楽家のひとりが高木正勝さんなのですが、彼の音楽は心底やさしい。人の手によって作り出された音楽なのに、太陽の光など自然の恵みのように、聞くひとのうえにひとしく降り注ぐ、愛のようだといつも思います。

焼かれた土という、固くておもたい物質を扱いながらも、ほど遠くで笑っちゃいますが、ああそんな作品がいつか作れたらいいなあと思うのです。

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