個展「日常は薄光りする」
山本優美 個展「日常は薄光りする」が、先日無事に終了いたしました。会期中、会場に足を運んでくださった方、遠方から気に掛けてくださった方、みなさま誠にありがとうございました。
今回の個展は、コロナ禍による2度の延期を経てようやく開催することができたものです。作品の内容も企画の当初からは変化し、コロナ禍の外出自粛のなかで私が経験したことをもとに新作「日常は薄光りする」を制作し、発表しました。
コロナ禍の外出自粛のなかで、私自身が向き合うことになった家事労働から、家族の「身に着けられ、洗われ、畳まれた衣服」である洗濯物をモデルに制作しました。フェミニズムが標榜した有名な言葉に「個人的なことは政治的なこと」という有名な言葉があります。この言葉が今回の私の制作のインスピレーションとなっていました。しかしこの言葉によって意識化するよりも以前から「この時代に存在する以上、思うこと考えることすべては現代社会の影響を免れ得ず自分自身もまた、非常に現代的な何かの反映なのだ」ということを考えてきました。
私の制作の基礎には、常に日々の暮らしがあり、そこから得られた経験や感覚が制作へと繋がっています。「日常が尊い」と言うことは、言葉の上ではもはや使い古された表現かもしれません。今回の作品では日常のふとした美しさを取り出すだけでなく、同時にその日常が多分に孕んでいる問題、矛盾や葛藤にも、間接的ではありますが触れたいと思ってきました。
この作品は、コロナ禍における私自身の家族の姿なきポートレートであり、また同時にコロナ禍における私以外の人々の経験へも共有可能なものでもあります。その意味で、作品「日常は薄光りする」はこれまでの作品と連綿と繋がっており、単なる作家の家族の思い出やその記録ではありません。
今回の制作と発表で得た感触を糧に、次回の展覧会へ制作を進めていきます。
次回の個展は2023年の春、金沢の彗星倶楽部で予定しています。
コロナ禍を経験し、国家間の戦争が起こり、世の中が大きな転換点を迎えています。そのような時代のアートとは何なのか。私がすべきことは何なのか。自身に問うていきたいと思います。
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