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ミュージアムクルーズ


ミュージアム・クルーズは、金沢21世紀美術館が市内の小学4年生を美術館の展覧会に招待する鑑賞プログラムで、今年で11年目を迎えます。7~8人ほどのグループに分かれた小学生たちが、クルーズ・クルーと一緒に作品を鑑賞します。

現在作品を出品させていただいている「コレクション展1 Nous ぬう」がクルーズの対象展覧会で、先月このプログラムの作品鑑賞ボランティアであるクルーズ・クルーのみなさんの研修に講師としてお招きいただきトークを行いました。

自分自身のアートとの出会いを振り返ってみると、小学1年生のころ家族旅行で大原美術館を訪れたのがかすかな記憶として残っていますが、現代アートとの出会いになるとずっと遅い年齢だったように思います。(80年代生まれの私が小学生になった1990年代、現代美術に代わって現代アートという言葉が日本で盛んに言われるようになったのがこの時期)ですから9~10歳という年齢でアートと出会い、作品を肌で感じられるプログラムの意義はとても大きいと思っています。

美術館に足を運ぶ機会自体が、まずご家庭の興味や趣味、環境によるということ。でも学校のクラスメートや先生と一緒に、一度美術館に足を踏み入れてしまえば、そこには日常から少しはみ出しちゃっているような不思議なものがたくさんあるわけです。「え!こんなヘンテコなものが存在していいの?」「こんな風に感じたことを表に出してもいいの?」「こんなことを想像したよ。」私自身がそうだったのですが、このようなアート鑑賞の体験が、彼らがこれから成長していく過程で様々な困難にぶつかるとき、自分の考えや感性を肯定できる(もちろん他者のそれも)、ある種の心のシェルター、お守りのようなものになればいいなと思っています。

子供たちが充実した鑑賞を行えるよう尽力くださっているのが、ボランティアのクルーズ・クルーのみなさんです。現役の大学生から70代の方まで、子供が大好き、子供が苦手、アートに興味がある、現代アートに興味が持てなかった、孫が同プログラムに参加する、家族の転勤でやってきた土地で人との出会いを求めて、など様々な動機でボランティアに参加していらっしゃいます。みなさんそれぞれの生活や人生がチラリと垣間見えます。そして皆さんからは「(子供たちとのクルーズが)くせになる」「(子供との鑑賞が楽しくて)やめられない」「中毒です」という声が多く聞かれました。

実際の子供たちとの鑑賞や会話は想像をはるかに越えて自由でオープンなものでした。クルーの方々が、回を経るごと問いかけなどを工夫してくださり、子供たちの思ったこと、発見したことからどんどん話を広げておられました。作品鑑賞プログラムと最初に伺った際、アーティストの考えや意図を子供たちに説明するのかと想像していたので、少し意外に思いましたが、クルーズの様子を見ているうちに、作品鑑賞を可能なかぎり自由に広げていただきたいと思うようになりました。

たとえそれがアーティストの意図から離れたとしても、子供たちがそれぞれの作品の体験を持ちかえることが大事で、もし必要があるならば将来アートや作品について知る機会がきっとあるでしょう。

クルーのみなさんの中には、金沢市内で同時期に開催されていた私の個展に研修前、研修後とお越しくださった方もいて、クルーのみなさんと展覧会会場での鑑賞者とアーティストという関係だけではなく、もう少し身近なところからお話できたことが、私にとって刺激的でまた、みなさんの熱意に感動しました。

クルーズ・クルーのみなさん、ありがとうございました。また展覧会にもぜひいらしてください!

[ 写真提供:金沢21世紀美術館 ]

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