シンプルな技法

自己啓発本のようなタイトルですが、シンプルな技法によって作られた作品に惹かれ憧れます。私が作っている作品からすると真逆じゃないかと意外に思われるかもしれません。私の作品は「技巧的」とか「技術」というところで語られることが多いです。(自分の作品が技術的に洗練されているとは思わないのですが。)私はそもそも古い壁の染みや、屋外で色褪せたプラスチック容器とか道具の佇まいなどに見惚れるような人間で、技巧的であることや技術への執着は実は少ないです。 春に福井のE&Cギャラリーで拝見した藤本由紀夫さんの個展でシンプルな技法の凄さを改めて見せつけられました。ダンボールや紙箱の中にオルゴールが仕掛けられていて、鑑賞者はオルゴールを手で巻き音を鳴らすことができます。オルゴールの歯はアーティストによって所々抜かれており、音と音の間合いにも手が加えられています。 箱の中での反響によって印象的に鳴り響く音と、ねじを巻く時の音と感触。複数のオルゴールが重なり乱れる音。ダンボールは日常的な表情を見せつつも形やラベルなど精選されたものが美しく構成されています。中には藤本さんの宛名や差出人、内容品名のラベルが残されているものもありユーモラスでもあります。この総合的な体験! シンプルなといっても「単純な」という意味合いでは決してなく、そこには感性と知性によって計算された技巧が凝らされている。もちろん藤本さんの音楽的才能に裏付けられているのは言うまでもないのですが、その全体を統御する技術がすごいと思うのです。このような作品に出合うといつも私もいつかそんな境地に辿り着きたいなーと考えるのです。 工芸の領域では特に技術

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